少年日記

少年が成長していく物語

金持ちじいちゃん 貧乏父さん

 

僕のじいちゃんは経営者だった。

小さな工場を経営していた。

両親はじいちゃんの家で僕を育てた。

僕の実家はじいちゃん家だ。

 

僕はお金に不自由なく幼少期を過ごした。

小学生になると、なんとなく自分が友達より金持ちだということに気づいた。

明らかに友達の家より大きいし、車もたくさんある。

寿司も普通に食べるし、家具家電もすぐに新しいものを買ってしまう。

ゲームも漫画も好きなだけ買ってもらった。

 

僕はそれが普通だと思っていた。

社会人になってからわかったが、じいちゃんはかなり成功していた。

 

高校卒業まで実家で暮らした。

大学に進学し、首都圏に来てからはほとんど実家に帰らなくなった。

 

たまに帰ると、じいちゃんにはいつも驚かされる。

もうすぐ90歳になるのに、頭がキレッキレで好奇心が強い。

携帯を持ち、メールを使いこなす。

この間も、

ビットコインってなんだ?経済学部ならわかるだろ。

とメールしてきた。すごいよね。

 

一方で、僕の父さんは公務員だ。

僕が幼少の頃はかなり忙しく、ほとんど家に帰ってこなかった。

公務員が楽だというのは幻想だ

 

たまに帰省すると休日はずーっとツムツムをやっている。

それを母さんが横から見ている。彼らにはツムツムしか趣味がない。

本人達が楽しいならいいけど、なんだか見ていて辛い気持ちになる。

 

両親はいつもピリピリしていた。

勉強しろ。

部活の自主練をしろ。

いいところに就職しろ。

うちには金がない。

お前はだめなやつだ。

 

僕は両親に好かれていないと思った。

僕はあれこれ怒られすぎて、自分はダメなやつだと思い込んでいた。

だから一生懸命勉強していい大学に入ったし、いいところに就職した。

働いてみて分かったが、僕は全然ダメなやつじゃなくて、大抵のサラリーマンより優秀だった。

 

一方で、じいちゃんはめったに怒ることなかった。

寡黙で、趣味は読書。司馬遼太郎を好んだ。

好奇心が強く、なんでも知っていた。

将棋も教えてもらった。

 

じいちゃんは穏やかな性格だったが、会社を経営するというのはとても大変だったのだろう。

胃に穴があき、2回も手術をした。胃はもう普通の人の半分しか残っていない。

それに、仕事中に倒れて工具に指をはさんでしまった。指が一本ない。(ヤクザじゃないよw)

 

思えば偉大な経営者が近くにいたのに、仕事のことは何も話していない。

ほんとうにもったいない事だ。

 

今はほとんど実家に帰ることはないが、帰るたびに「じいちゃん、年取ったなぁ」と思う。

どんどん小さくなっていって、もう杖がないと歩けない。

でも話すと、いつもどおりキレッキレだから元気なのかと思っていた。

 

そんなじいちゃんがこの間、肺炎で入院した。

もう退院してしまったが、僕は仕事で御見舞に行くことが出来なかった。

 

僕は実家に帰れないことや、

中学生の時ひどいことを言ってしまったことを後悔した。

 

人の命はろうそくのように消えていく儚いものだ。

自分にとって、かけがいのない人への感謝の気持ちは、その人を失いそうになってからしか気づけない。 

感謝の気持ちを伝える前に、人生はあっという間に過ぎていく。 

 

じいちゃんは僕が生まれた時に、多額の養老保険を僕にかけてくれた。

大学を卒業した時にそのことを教えてもらったが、額に驚いた。

 

でもその時、両親も僕のために定期預金をしていてくれたことを知った。

「結婚するときに、使いなさい。」と通帳を渡してくれた。

あれだけお金がないと言っていたのに、僕が誰かと結婚するときのために、コツコツお金をとっておいてくれたのだ。

 

僕は両親に好かれていなかったわけではなかった。

じいちゃんも、両親も、僕に対する愛情は大きかった。

今の僕にこのお金を使う資格はない。

 

 

ずっとサラリーマンでいるのは本当によくないと思う。

時間と成果に追われ、人と過ごす時間を大切に出来ない。

人生をじわじわ消耗していく。

そんな状態では、大切な人への気持ちが相手に伝わらなくなる。

 

もしかしたらじいちゃんも、僕が好きじゃないから見舞いに来てくれなかったと思ったかもしれない。